冷凍海老の製造過程では、保水剤を使って見た目や触感を良くすることがあります。
品質と鮮度にこだわった海老を届ける「コーラルシー」では、保水剤が海老に与える効果を調べるために「奇跡の海老®(種類はバナメイ海老)」を使ったテストを実施。果たして保水剤は「奇跡の海老®」にどのような影響を与えるのでしょうか?また1回目の保水剤テスト「インド産バナメイ海老」と比較して結果に違いが出るのでしょうか?
今回は「奇跡の海老®」の保水剤テストの結果について詳しく解説します。
海老に使われる保水剤とは?
海老に使われる保水剤とは、海老を加熱した際に、水分やプリプリした触感を残すために用いる食品添加物のことです。
「保水剤が使われた海老は美味しくない」との声もありますが、実際はどうなのでしょうか?
今回の保水剤テストに使うのは奇跡の海老®
今回の保水剤テストに使うのは、高品質な海老を提供する「コーラルシー」が誇る「奇跡の海老®」。
「奇跡の海老®」は水質管理を徹底した養殖池で水揚げの後、氷水で約5分締め、氷のみで保冷。海老に水を含ませないように配慮して工場に運び、速やかに加工したこだわりの海老です。
前回2022年2月25日に行った保水剤テストでは、インド産バナメイ海老を使用しました。両者の海老の保水剤テストにおいて、どのような違いが出るのか見ていきましょう。
使用する保水剤の成分
保水剤は前回同様にIS-30を使用します。
うま味調味料として使われるL-グルタミン酸ナトリウムを10%含んでいます。
PH値は食品添加物として一般的に使われている12で、侵漬後の海老は赤く発色するのが特徴です。
IS-30の成分
リン酸三カルシウム | 35.0% |
リン酸三ナトリウム | 15.0% |
クエン酸三ナトリウム | 10.0% |
L-グルタミン酸ナトリウム | 10.0% |
乳酸カリウム | 10.0% |
グリシン | 4.0% |
コハク酸二ナトリウム | 1.0% |
食品素材 | 15.0% |
保水剤と塩の使用量
保水剤の使用量は水1.0リットル(1000g)に対して3% の30g。
塩(赤穂の天塩、食塩相当量92g/100gを使用)は1%の 10g。前回は2%にしたところ、塩辛いとの声があったので1%に減らしました。
保水剤と塩の使用量
水道水 | 1.0リットル |
保水剤 | 3%の30g |
塩 | 1%の10g |
食品の安全のために水道水を一度煮沸し、お湯の状態に上記の保水剤と塩を入れて溶かします。
保水テストの結果(保水4時間後)
「奇跡の海老®16/20」から10尾抜き取り、殻をむきます。
殻をむいた後の総重量は575gです。
291gを保水加工しないもの、284gを保水加工するものに分けます。
284gの海老を「保水剤と塩を溶かした水」に入れて、保水テストを開始。
保水1時間後の変化
アルカリによる発色効果が見られました。
保水4時間後の変化
保水により重量が284gから290gに変化したので、102.11%に膨張したことになります。
インド産バナメイ海老の保水効果が110.7%だったのに対し、奇跡の海老®においてはわずか102.11%。水漬けしていない海老の保水効果は、低いという結果となりました。
4時間後の保水効果を比較
4時間後の保水効果 | |
奇跡の海老® | 102.11% |
インド産バナメイ海老 | 110.7% |
1分間加熱した後の身の縮み
次に、奇跡の海老®を1分間加熱した際の身の縮みを観察。
保水しなかった奇跡の海老®は291gから262gに変化し、90.034% (前回行ったインド産バナメイ海老では84.3%) のサイズに縮みました。
保水加工を4時間行った奇跡の海老®は290g→271g に変化し、93.4% (前回行ったインド産バナメイ海老では90.96%)のサイズに縮みました。
奇跡の海老®はインド産海老と比べると、保水・無保水共に加熱後の身の縮みが少ないことが判明しました。
1分間加熱した後の身の縮み(歩留まり)を比較
保水しなかった海老 | 保水加工を4時間行った海老 | |
奇跡の海老 | 90.034% | 93.4% |
インド産バナメイ海老 | 84.3% | 90.96% |
試食評価
奇跡の海老®の試食評価は以下の結果になりました。
奇跡の海老®の試食評価
保水しなかった海老 | ボイル後の色がしっかりでている。少しパサつくが、味は濃厚である。前回のインド産海老とは、比較にならないぐらい美味しい。 |
保水した海老 | ボイル後の色が幾分薄まる。弾力があって、食べやすい。塩味が効いていると甘みが引き立って美味しい。 |
奇跡の海老®では、保水・無保水どちらも評価する声があり、前回のインド産海老
テストの時と比べて、味の評価があまり分かれませんでした。※
また保水する時の塩の量を2%から1%にしたので、保水海老が塩辛いという声もなく、美味しいという評価になりました。
※インド産海老の時は、保水しない海老より保水した海老の方が評価は高かった。
まとめ
2回の保水剤テストを行い、保水剤の効果がはっきりわかりました。
保水剤の効果とは
- 膨張(増量)させることで、コスト面での効果があること
- 食感に弾力が出て食べやすくなること
- うま味調味料や食塩の効果で味が良くなること
- 過熱した時の身の縮みが少なくなること
などです。
奇跡の海老®(水漬けしていない海老)に保水剤を使った結果、保水・無保水海老共に保水効果が低いことが判明。
また保水すると海老の身に弾力が出てうま味が増すこともわかりました。さらに保水していない状態でも加熱時に縮みにくく、味も良いとの結果になりました。
対してインド産バナメイ海老(水漬けした海老)に保水剤を使うと保水効果が高いため、海老が膨張して大きくなるのでコストダウンなどの提案が可能です。
しかし加熱した際に縮みやすく、味が薄まってしまい、臭みも出やすくなるなどデメリットも考えられます。
コーラルシーでは、保水をしなくても海老本来の自然な味を楽しめる、商品づくりと提案を常に心がけています。