酸化防止剤は、エビの黒変防止に使われることがあります。
実際、どのぐらいの黒変防止効果があるのでしょうか?
今回はコーラルシーの2種類の養殖エビを使った酸化防止剤のテストを行い、その結果についてまとめました。
酸化防止剤とは?
酸化防止剤とは、食品や化粧品などの成分の酸化を抑制するために添加される抗酸化物質のこと。
「酸化防止剤は添加物だから体に悪いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、法律で人体への影響がほとんどない量が定められています。
エビでの酸化防止剤の使用限度は、二酸化硫黄100ppm。これが、食品衛生法で定められている使用の上限です。この上限を守れば、適切な表示を行った上での海老への使用が認められております。
エビの黒変とは?
エビの黒変は、エビの殻に含まれるアミノ酸の一種であるチロシンが、体内組織中に広く含まれる酸化酵素(チロシナーゼ等)と反応してメラニンが生成されることによって起こります。
酸化防止剤(亜硫酸塩)とは、主成分が二酸化硫黄です。これにチロシナーゼの活性化阻害作用があるため、エビの黒変防止作用が期待できます。
一方で酸化防止剤に含まれるL-アスコルビン酸(ビタミンC)にはこのチロシナーゼの活性化阻害作用がないため、酸化防止効果はあるものの二酸化硫黄と比較すると弱いです。
黒変が殻付きのエビでしか起こらないのは、黒変がエビの殻の成分で起こるから。黒変のスピードはエビによって異なります。
リンゴやアボカドが黒くなるのと同じ原理なので味や品質に問題はありませんが、見た目が悪くなるのがデメリットです。
酸化防止剤テスト~インド産バナメイエビ編~
今回の酸化防止剤テストで使った「エビの種類」と「酸化防止剤の濃度」は以下の通りです。
使用原料 | インド産バナメイエビ |
酸化防止剤(亜硫酸塩) | 0.3% |
酸化防止剤を使ったものと使わないもので、解凍後24時間の変化を観察した結果は以下です。
酸化防止剤を使ったエビ | 黒変なし |
酸化防止剤を使わなかったエビ | 尻尾などに明らかな黒変が出た |
酸化防止剤を使ったエビは黒変せず、使わなかったエビには尻尾などに明らかな黒変が出ました。酸化防止剤の効果が顕著に現れた結果と言えます。
酸化防止剤テスト~スリランカ産バナメイ「奇跡のエビ」編~
次にスリランカ産バナメイ「奇跡のエビ」を使って、前回のインド産バナメイエビと同条件で酸化防止剤テストを行いました。
使用原料 | スリランカ産バナメイ「奇跡のエビ」 |
酸化防止剤(亜硫酸塩) | 0.3% |
前回の「インド産バナメイエビ」が、水揚げ後に冷水に浸漬した状態で工場に輸送するのに対して、今回の「奇跡のエビ」は、水揚げして氷水で活け締めしたあとは冷水に浸漬せずに工場に運び込み、速やかに加工を行いました。
冷水に浸漬したもの(インド産バナメイエビ)と、しなかったもの(奇跡のエビ)で、どのような黒変の違いがあるかを確認するのが目的です。
「奇跡のエビ」に酸化防止剤と使ったものと使わないもので、解凍後24時間の変化を観察した結果が以下です。
酸化防止剤を使ったエビ | 多少黒変が多い |
酸化防止剤を使わなかったエビ | 黒変なし |
酸化防止剤を使用していない方に多少黒変が多いような気がしましたが、あまり大きな違いは見られませんでした。
水揚げ後に活け締めして冷水に浸さないことで、酸化防止剤を使わなくても黒変しにくいことが判明しました。
コーラルシーが誇るエビの活け締めとは?
活け締め(いけじめ)とは魚介類を漁獲したあとの処理方法のこと。
コーラルシーの海老は、主に約120日間の養殖期間を経て、エビが約30~40gになると水揚げします。
水揚げ直後に氷水で活け締めを行い水を含ませないことで、ストレスなく育った養殖エビの「天然エビの味わいに近い旨み」を最大限逃がさないように頑張っています。この活締めと水を含ませないことが、美味しい海老を作るうえで最も大切です。
新鮮なエビを水に漬けてしまうと旨みが流れて水っぽくなり、美味しさが失われたり、現地での水の臭みが海老を移ってしまうからです。
まとめ
「インド産バナメイエビ」と「スリランカ産バナメイエビ(奇跡のエビ)」で酸化防止剤テストを行いました。
両方とも酸化防止剤を使うことでキレイな赤色をキープ。
酸化防止剤を使わなかった場合の色の変化は「インド産バナメイエビ」には黒変が現れたのに対し、「スリランカ産バナメイエビ(奇跡のエビ)」はほとんど黒変が見られませんでした。
両者の違いは「インド産バナメイエビ」は水揚げ後水にさらし、「スリランカ産バナメイエビ(奇跡のエビ)」は水にさらさなかったこと。
水揚げ後に活け締めして水にさらさないことで、旨みがぎゅっと閉じ込められるだけでなく、黒変しにくいことも判明しました。