スルメイカ来遊、不振の前年下回る研究者が予想 水温原因で親不足

全国いか加工業協同組合が24日、東京都内で開いた「2018年度いか漁海況研修会」で、水産研究・教育機構の研究者らが各種イカ資源の減退を紹介した。同機構北海道区水産研究所の岡本俊研究員は今年の太平洋系スルメイカ資源について、水温条件のせいで激減して親魚不足となり、条件改善後も回復できていないと解説。東北区水産研究所の阿保純一主任研究員は、環境条件的に今年増えるとみられていたアメリカオオアカイカ(南米アカイカ)について、漁獲が伸び悩んでおり本当に資源が回復しているか不明だと疑った。

 

岡本研究員は太平洋側のスルメ漁の主体となる冬生まれの個体群について説明した。生まれたての仔スルメが18~23度の水温でないと生き残りづらいこと、好適な水温域が15~16年に極端に狭かったことを示し、このせいで資源が減ったと分析。資源減は親魚不足につながり、水温分布がやや改善した17~18年も十分に回復できなかったとした。

今年スルメ漁期前の捕獲調査も結果は芳しくなく、漁場への来遊は大凶漁だった昨年も下回りそうだと結論。国の推定によると、14年に71万トンあったスルメ同群の推定資源量は15年50万トン、16年26万トン、17年22万トン、今年18万トンとなっている。

南米アカイカ回復に疑問

阿保主任研究員は、南米のイカ不調を紹介。アメリカオオアカイカの漁獲は、主漁場のペルーで14~15年に各50万トンを超えたが減り、17年は30万トン弱。同資源は過剰漁獲の兆候が見られず資源に悪影響を与えるエルニーニョ現象の影響も近年なくなっているため、同国政府は資源回復を予測し、今年の漁獲枠を前年比2割増の61万トンとした。だが、今年も同種の漁獲は伸び悩んでおり、本当に資源が回復したか疑わしいという。

阿保主任研究員は、スルメの代替として使われるアルゼンチンマツイカについても言及した。主漁場である公海域には同種を資源管理する国際機関がなく、そもそも資源データが足りないと指摘。資源の指標となるアルゼンチンでの漁獲も、00年前後に年間6万トン超あったものが近年3万トン前後に落ち込んでいることを示し、良い状態にはなさそうだとみた。

同機構中央水産研究所の三木奈都子主任研究員も登壇。中小のイカ加工業者が原料不足で淘汰(とうた)された場合、地元経済に打撃があるだけでなく、中小ならではの”こだわり路線“の加工品が消え、加工品市場のラインアップが単調化していく可能性があると懸念した。

(2018年8月25日付 みなと新聞より記事を引用)